「バンドマン」と一言でいっても、その活動スタイルは様々だ。音楽的なジャンルという意味であってもそれぞれ個性的であるし、その活動の裏にはバンドの数だけ異なる人生的なテーマが垣間見えたりする。
このコラムは「音楽と仕事」をテーマに、精力的な音楽活動を行っているミュージシャン・バンドマンへのインタビューを通じて、音楽と仕事の両立や音楽を辞めた後のセカンドキャリアについて考える企画である。
第二回目には、京都で活動する3ピースバンド「YUNOWA(ユノワ)」のベーシストであり、外資系メーカー営業のビジネスマンとしても働く福森氏にお話を伺った。
YUNOWA(ユノワ)プロフィール
YUNOWA(ユノワ)は京都を拠点としたスリーピースロックバンド。ジャズやR&B、ダブ等様々なテイストを含みつつも、あくまで抑制と隙間を追及したアンサンブルを特徴としている。
Instagram:@ynwjp
Twitter:@yunowa3
MV
1.YUNOWA(ユノワ)を結成するまでの経緯・きっかけ
よろしくお願いします。YUNOWAの結成までのお話をきかせてください
福森「幼馴染と中学の頃からバンド組んでたんですけど、その時のドラムが今のYUNOWAのシマ(島村)でした。私が中学の途中から大阪に引っ越した後も、友達として緩く繋がってる状態が続いてたんです。
その後それぞれ違うバンド組んだりしつつ大学を卒業してお互い社会人になる頃、シマが京都で就職。その時、『会社に音楽の趣味が合いそうなギターのやつがいる』と紹介されたのがボーカルの水野でした。
最初はいきなりバンド組むぞ!とまでは意気込んでいなくて、とりあえずスタジオで音出して遊んでみようか、という軽い感じでした。そんな遊びが何回か続いたあと、せっかくだしライブしてみる?という話になり、オリジナルの曲を作り始めたのがYUNOWAの始まりです。2018年12月の京都GROWLYが初ライブでしたね。」
そこから今の活動スタイルになっていくんですね
福森「バンド組んだ時点でメンバー全員サラリーマンだったので大きく状況が変わったりはしてないですね。その後シマが転職を機に愛知に帰ったのですが、練習やライブの時は京都に来てもらってます。
もともと京都が拠点だったのと、シマもバンドを続ける意思があったのでそんな形になりましたが、最近は名古屋のライブが決まったりもしています。今後は機会があれば京都・大阪以外でもライブをしていきたいと考えてます。」
2.仕事をしながらでも音楽性を高く保つ方法
普段の練習はどんな感じでされていますか?頻度や方法などは
福森「ライブや音源制作のスケジュールにも依るんですけど、集まってスタジオ入るのは大体月1~2回くらいの頻度です。
練習頻度が少なくて時間を無駄にできないので、スタジオの時は毎回集中して練習しています。今年の3月にEPを出してからその曲を集中的に演ってたのと、7月に行った自主企画に向けて毎週のようにライブをしていた時期もありバンドとして仕上がってきた感じもあります。ライブを重ねてると自然と呼吸も合ってくるんだと思います。」
アンサンブルを保つために、それぞれ個人練習とかもされてるんでしょうか
福森「メンバーがそれぞれどんな練習をしてるかは知りません。そこは各々に任せてて、特に課題を出し合ったりとかもありません。ライブの後で『さっきの部分走り気味だったなぁ』など反省したり、参考になるようなYouTubeのリンクを送りあって『俺らもこんなのやろうぜ』みたいな話はしますね。」
曲作りの方法について教えてください
福森「私かギターボーカルの水野が曲を持ってくるか、スタジオでジャムってるなかでだんだん出来上がっていくスタイルが多いです。Aメロだけ作って、後の構成をみんなで考えたりとか。歌についてはほとんど後入れです。
3人の都合が合わない時は、私と水野だけ集まってアイディア出しとかをしたりしますよ。ドラムは打ち込みでアイデアを出して後から生ドラムに翻訳することになるんですけど、それもいい味になるのかなと思いますね。」
サラリーマンのバンド活動は時間が無くて難しい印象がありました
福森「そんなことないですよ。自分たちのように30歳になってもバンドやってる人たちは稼いだお金をつぎ込んでしっかり音楽をやってる人が多い印象です(笑)対バンからも色々な面で刺激を受けますし、いいバンドと当ててもらえてますね。
一方で、(YUNOWAの)3人とも売れたいとはあまり考えていないと思います。結果的に売れればもちろん嬉しいですが、売れるような音楽性でもないと思いますし。それよりも長く続けることの優先度の方が高いです。ただ長く続けるとは言っても、ダラダラ続けるつもりはなく、音源を作ったり定期的にライブをすることでダレずに活動を続けていけています。」
3.バンドを続けていくためのキャリア戦略
ここからは福森さんの個人的なキャリアについて聞いてみたいのですが、20代後半であらためてバンドを組むとなって、仕事とどうやってバランスをとりましたか?
福森「私の場合、バンドのために仕事を調整したことはほぼないですね。ライブやスタジオ練週は土日なので平日に残業があっても関係ないですし。ただ他のメンバーは必ずしもそうではなく、週末の出勤日と被ればライブの誘いをお断りすることもあります。そういう意味では仕事優先のスケジュール感にはなっていますが、逆に平日のイベントでもメンバー全員で有給を取って出演することもあります。」
福森さんは転職の経験もあるそうですが、それはキャリアアップのためですか?
福森「カッコよく言うとそうなんですけど、正直に言うと前の会社とは合わなくなったという個人的な理由です(笑)。英語系の転職だったので、外資系企業の紹介をしている「ロバートウォルターズ」と、求人数の多い大手の「doda」っていう転職エージェントを使ってました。
年収は転職したことで100万円ほど上がりました。転職先が外資系で日系企業のようなボーナスはないのですが、シンプルに毎月の収入が増えて生活に安定感も増しましたね。転職した時はすでにバンド活動をしていたので、エージェントには土日休みで関西圏の勤務地、英語を活用できる仕事、という要望を伝えて転職活動をしていました。」
福森さんが優秀だからうまく転職できた、という印象があります
福森「いや、そんなことないですよ。大学在学中は就職先が決まらなくて新卒では就職できなかったんです。そのまま就活を続けても難しそうだと考えて、卒業後にカナダへ留学して英語の資格を取って帰国後就活をやりなおしたんです。1社目はTOEIC800点が必須の業種で、私はTOEICのスコアを持っていなかったのですが、その時に取ったケンブリッジ英検のFCEでそれ相当と判断されて、受けてみたらうまく内定を頂けました。
あと外資といっても内情は様々で、今勤めてる会社はけっこう日系企業よりの風土です。もちろん一定の社内評価はされますが、成績によっていきなりクビになったりとかはあまり聞いたことがありません。」
フリーターでバンドをするか就職してバンドをするか迷っている人がいたら、どんなアドバイスをしますか?
福森「私なら就職して生活の基盤を整えてからバンド活動をすることをおすすめしますね。夢の無い言い方ですが、バンドで一本で食っていける人の少なさを知っていますし、売れるまで頑張るとしても兼業バンドマンとして活動する方が固いやり方だと思います。
私は学生時代に組んでいたバンドは就活のタイミングで辞めています。音楽活動は好きでしたが、その時点ではいったん就職して生活の基盤を固めてからバンドを再開しようと思ってました。結果的にはその選択で良かったと思います。」
4.編集後記
バンドの収入だけで生活をしたい、という風に考えている人は少なくないし、実際に生活できているバンドマンもいる。しかし、すべての音楽がそれに収束していくはずもなく、収益とは無関係な「自由さ」によって生まれるYUNOWAのような芸術もあるだろう。
また、福森氏のような事例は、真剣に長く音楽活動を行っていきたい人へ勇気を与えるものだ。音楽性とキャリアは交換されるものではなく、どちらも突き詰めて考えていくことができる。
今回の福森氏のお話は、自身の音楽と生活を分けたうえで強固なバランスを取っているということが印象的だった。生活と音楽が深く関わりすぎず、しかし決して無関係でもない、不鮮明でアンビギュアスでありながらリズムの骨子を失わないスタンスは、YUNOWAの音楽にも現れているのではないだろうか。
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YUNOWA(ユノワ)発売中 EP
YUNOWA『What a mess』
発売:2022年3月2日
価格:900円
YUNOWA LIVE SCHEDULE
■9月2日(金)大阪 扇町Para-dice
『[beyond]』
w/LOOLOWNINGEN&THE FAR EAST IDIOTS/YOLZ IN THE SKY
Open 19:00 Start 19:30 (YUNOWA 20:25~)
¥2,500(+1drink)
https://para-dice.net/index.html
■9月17日(土)大阪 寺田町Fireloop
『TURBO LIGHTER「Hybrid」 Release Event』
w/TURBO LIGHTER/MUSHS/BAD END BOYS/Legecko/PLATFORM
Open 17:30 Start 18:00 (YUNOWA 19:00~)
¥2,400(+1drink)
http://fireloop.net/schedule_now.shtml#
■10月8日(土)京都 二条Growly
『自主企画“You Know What vol.4”』
w/The World Will Tear Us Apart/pile of hex/the elks
Open 18:00 Start 18:30
adv ¥2,200(+1drink)
https://growly.net/schedule/detail.html?id=6190
■10月15日(土)名古屋 鶴舞K.Dハポン
w/ペペッターズ/and more…
Open 18:00 Start 18:30
¥2,900(+1drink)
※YUNOWAの最新情報はこちらから
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