フジオユウト インタビュー「やり残したことが多くある気がする」【音楽と仕事Vol.1】

インタビュー・体験談

「ミュージシャン」「シンガーソングライター」と聞くと、華やかなイメージを持つ方も多いのではないだろうか。しかし、音楽活動だけで生活資金を稼いでいる人は今も昔もごく少数であり、多くのファンを抱えるロックバンドなども、平日は違う仕事をこなしていることも少なくない。

これは決してネガティブなことではなく、多くの時間を費やす「仕事」からインスピレーションを得て、人々の共感を得る作品作りや新たな表現に繋がることもある。音楽制作と仕事は密接にかかわっており、生活という一面から覗いてみると、単純に切り分けて考えることは出来ないのだ。

このコラムでは「音楽と仕事」をテーマに、実際にアルバイトや仕事をしながら精力的な音楽活動を行っているミュージシャンに焦点を当て、インタビューを行った。第一回目に話を伺ったのは、東京都を中心に活動しているシンガーソングライターの「フジオユウト」氏である。

フジオユウト プロフィール


フジオユウト
東京・高円寺を中心に活動するシンガーソングライター。1991年大阪で生まれ、19歳で上京し、ウルトラスラッシュのギターボーカルとして下北沢、新宿をメインに活動。バンド解散後は「フジオユウト」の一人名義で、弾き語りの楽曲スタイル。70年代フォークを想起する優しい音色、等身大の生活・体温を感じさせるリアルな詩が特徴的だ。

Instagram:@fujioyuuto

MV

1.音楽・バンドを始めようと思ったきっかけ

今日はよろしくお願いします。音楽を始めたきっかけや、これまでの活動経歴をお聞かせください。

フジオユウト「音楽を始めようと思ったのは、中学生の頃に「aikoに会いたい」と思ったのがきっかけです。音楽で売れたら、同じステージで会えるかもしれない、そんな風にミーハーな動機がきっかけでした。

ただ、バンドをしようと思っても何から始めたらよいか分からないので、バンドの始め方を知るためにブックオフでギターの絵が表紙に描いてあった「※BECK」っていう漫画を参考にしてました。当時ネットが無かったので、なぜか漫画から情報収集するっていう遠回りをしてましたね。

そんな感じの中学だったので、実際にバンドを組んだのは高校に入ってからです。軽音部があったので、同級生とコピーバンドを組んだり、地元のライブハウスに行ったりするようになっていきましたね。銀杏BOYZ、ガガガSP、ブルーハーツ、とかやってました。

高校は中退しちゃったんですけど、19歳の頃にヒッチハイクで一人で東京に行きました。それで、バイト先の友達とバンド組んだのがウルトラスラッシュというバンドです。」

※参考:BECK(1) (月刊少年マガジンコミックス)

2.今の音楽活動について

今の一人活動スタイルになったのはいつ頃からですか?

フジオユウト「コロナ禍になってからですね。コロナになってメンバーが集まりづらくなったのと、正規じゃなくサポートメンバーだったので活動にお金もかかってしまう背景もあり、今の一人スタイルでやるようになっていきました。

あと、ライブハウスの営業が自粛していったのも大きかったです。路上だと動員に悩まなくていいし、路上で知らない人に聞いてもらった方が次に繋がっていく。一人で活動しているとフットワークが軽いので色んな手段が取れるのがいいですね。」

路上での活動がメインなんですね。時間帯や場所など、どんなスタンスで活動されているのでしょうか?

フジオユウト「今は週5日で夜0:00~翌朝くらいまで、高円寺や渋谷近辺で路上活動をしています。スタジオ代の節約にもなるし、場所取りの競合もいないのでやりやすいです。もちろん深夜だと日中より人通りは少ないですけど、人が0になることはないので。」

高円寺路上で引き語りをするフジオユウト

フジオユウト「深夜にやっているもう一つの理由としては、今の高円寺って「弾き語り戦国時代」なんですよ。混んでる時間だと音も被るし、大きい声出した人が強い、みたいになりがちなのであえて避けてるとこもあります。

路上ライブをしていると道行く人とコミュニケーションできるし、月トータル3万円程度の投げ銭がもらえたり、通常のライブよりも効率よく感じてます。音源や映像制作の方にも強い興味があるので、今は良い活動スタイルが作れています。」

3.音楽活動と仕事の両立・将来の不安

就職せずに音楽活動を続けることに不安は感じなかったですか?

フジオユウト「28歳くらいの時、急にすごく不安になったことがあります。音楽だけでは生活できないというのが実感として感じられるようになって。その時は居酒屋でフルタイムで働いてたので、「このままでは料理人になってしまう」という危機感がありました(笑)。

でも、就職すると思うように音楽ができなくなりそう、って考えちゃうんですよね。そういう、正社員で働きながら音楽活動をしている人も多いと知ってるんですけど。僕は音楽続けている限り就職という形はとらないんじゃないかなと思います。

じゃあなんで音楽を続けているのか、ってことなんですけど、音楽を辞めている自分がまだ想像できないんです。やり残したことが多くある気がするから。

あとは、後世に語り継がれるような美しい歌を世に出してみたい。確か山下達郎さんが「僕は時代が変わっても残る歌を作っている」みたいなことを言っていた記憶があるんですけど、そういう歌を自分でも作りたいというのはずっと考えています。」

今は音楽活動以外に、どんなお仕事をされているのでしょうか?

フジオユウト「1日ごとに仕事の応募ができるアプリやアルバイトサイトを使って、単発の仕事をしています。飲食経験が長いので、飲食系だとすぐ仕事が決まるので便利です。また、1日の数時間とかごとに設定できるので、急にお金が必要になった時とかは利用しています。普段、そんなにお金を使う活動をしていないのですが、録音とかMV作成とか、そういう時は仕事を多めにしてお金を貯めたりします。

あとは、さっきも少し言ったんですが、路上で月平均3万円くらい稼げてたりするので、ちょっとした副業くらいの収入になってますね。」

普段の仕事を通じて学んだこと、音楽制作に影響はありますか?

フジオユウト「高校中退で大学とかにも行っていなかったので、社会的な立ち振る舞いとか、対人関係、普通の人がコミュニティで学ぶようなことは仕事を通じて教えてもらったと思います。

音楽的にどういう影響があるのか、というのは自分ではあまり分からないんですが、東京で初めて組んだバンドのバンドメンバーもバイト先で見つけたので、色々な人との出会いとか、そういう場にもなっているかなと思います。」

今後の活動方針について教えてください

フジオユウト「音楽の方は、ライブ活動よりも、音源やMVなどの映像制作に時間を使っていきたいと思っています。残るコンテンツをもっと増やしていきたい、という感じです。最近は、路上の様子もインスタグラムでライブ配信していたり、Youtubeに切り抜いてショート動画を投稿したり、そういうこともせこせこやっています。

仕事の方は、今のところ就職する予定はないですが、いずれ結婚とか、好きな人と一緒にいたいと考え始めたら多分すると思います。料理人になる、ということも真剣に考えたことがあったんですよ。

今のような活動スタイルがいつまで続けられるか分からないけど、ただ、音楽と向き合えてる今の生活への満足感はあります。人から見るともっとしっかりしろって思う人もいるかもしれないですけど、そういう部分も自分なのでしょうがないっすね。」

4.編集後記

いつか売れるため、夢を追いかけるためにアルバイトをしながら音楽活動をする人も多いだろう。また、「音楽活動は若い人が行うものであり、大人になったら就職するべきだ」、と考える人も多いかもしれない。

一方で、自分の理想とする生活を営むために、あえて音楽を中心とした生活スタイルを選択する人もいる。求める生活は人それぞれであり、その向き合い方には正解がない。つまり、自分が納得し満足できる生活は自分で模索していくしかない。

今回、フジオユウト氏のお話をうかがったことで、音楽と向き合う生活をどのように構築していくのか、やはりそれも自分自身で答えを出していくしかないことが感じられた。彼の作り出す音楽はどれも生活感にあふれ、どこか男の弱さを感じさせるものだが、彼が選び取った人生からにじみ出るものであることは間違いないように思う。

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