音楽で生活することはできる?必要な年収と活動内容・方法をシミュレーション

音楽と仕事のコラム

「音楽活動で生活するのは難しい」ということはなんとなく理解できるものの、音楽活動で生活するためには実際にはいくら必要で、どんな活動をすれば良いか具体的に理解されている方は少ないのではないでしょうか。

そこで今回のコラムでは、音楽活動だけで生活をしていくために必要な年収と活動内容をシミュレーションしてみました。ご参考ください。

1.日本の成人一人当たりの生活費

総務省の「家計調査報告」の統計によると、2020年の単身者世帯(一人暮らし)の月の平均支出は148,402円となっています。(※新型コロナウイルスの感染拡大が起きる前の2019年は平均163,308円となっており、緊急事態宣言などで外出が制限されたことから15,000円ほど節約につながっていることが分かります。)

音楽活動をしていくにはこれに加えて練習スタジオの費用や機材費、ツアーの交通費などの投資資金が必要になります。多少は節約するとしても、貯金や税金なども考慮すると、年齢にもよりますがおおよそ「月20万円」が最低ラインの目安になってくるでしょう。

2.音楽活動による収益ポイント

音楽活動で得られる収益ポイントは様々です。近年ではライブ配信の投げ銭もアーティストの重要な収入源となっていることや、CD販売の収益は激減してSpotifyやApple Musicなどのダウンロードコンテンツ、YouTubeのMVなどに切り替わっています。

スマートフォンの普及とITの進歩によってユーザーへ届くコンテンツの形態も常に変化していると言えるでしょう。そこで、まずは2022年時点の音楽シーンの中でどのような活動が収益につながるのかまとめてみます。

2-1.ライブチケットの販売・動員

音楽活動の基本となるライブチケットの販売による売上です。イベントの形式にもよりますが、アマチュアバンドのチケット相場は1,500~3,000円ほどになっており、イベントごとにバック率やバックされる動員数の条件などが設定されています。

知名度が上がるにつれてチケットの価格を高く設定したり、イベントに呼ばれただけでギャランティーが発生するなどの条件を設定されたりします。この価格はピンキリですが、メジャー経験のある有名なバンドの1回の出演依頼で30~50万円のギャランティーが相場となります。アマチュア4人組バンドだと5~10万円です。

2-2.グッズ販売(物販)

ライブ会場で販売される物販はアーティストの重要な収益ポイントです。かつてはCDがメインでしたが、ロゴの入ったTシャツやバッグなどのアパレルに切り替わっており、アイドル色の強いアーティストでは「一緒にチェキが取れる」などの体験を販売していることもあります。

粗利が多くとれることや、他のバンドを見に来たお客さんから購入してもらえることもあるため、積極的に収益に繋げていきたい部分と言えるでしょう。また、新型コロナウイルスの感染拡大により現場でのライブ活動が難しくなったため、インスタグラムなどを活用したEC販売に切り替えるアーティストも多くいました。

2-3.音楽配信

SpotifyやApple Musicのプラットフォームを活用した音楽配信サービスも、音楽活動で得られる収益ポイントです。

しかし、1回再生ごとに得られる収益は非常に限られており、アーティストに還元される割合は決して多くありません。

例えばSpotifyの場合、収益の30%がSpotifyの手数料となり、残りの70%をアーティストの再生回数に応じて分配する仕組みになっています。再生回数が多いアーティストが全体の2%を占める再生回数だった場合、そのアーティストに70%のうちの2%が分配されることになります。

その時々の収益にもよりますが、おおよそ1回再生当たりの収益は0.3~1円の幅になります。つまり、月に10万回再生される中堅アーティストでも3万円~10万円の収入にしかなっていないということになり、レコーディング費用や制作にかかった労力を考えると確実に赤字です。

これらの背景から、アーティストにとって音楽販売は重要な収益ポイントと言えず、より多くの人に知ってもらうための広告的な扱いになってきていると言えます。

2-4.企業とのタイアップ・イベント出演・広告の起用

音楽活動が軌道にのると知名度が上がり、アーティストのファンへ商品を知ってもらいたい企業からのタイアップを受けることがあります。YouTuberが「案件」と呼び動画内で紹介しているのも、企業のタイアップ方法の1種となります。

タイアップによるギャランティは契約内容によってまちまちで、アーティストのブランド力や知名度に大きく左右されます。TVCMに起用されれば数百万円~数千万円のギャランティが入ることもありますが、リアルイベントの出演で1回数万円ということもあります。広告代理店が間に入るため個人活動しているミュージシャンにはなかなかハードルが高く、事務所に所属しているアーティストで回されることが多い方法と言えるでしょう。

2-5.ライブ配信の投げ銭

ミュージシャンの重要な収益ポイントとなるのがライブ配信の投げ銭です。ファンが直接課金して応援できることから、アーティストでも積極的に活用しているグループは多いものです。

また、課金をしていないユーザーも気軽に見れることから新規のファンも獲得しやすく、広告効果と収益の両方のメリットがあります。

デメリットとしては、純粋な音楽ファンが集まることは少ないために音楽の良し悪しだけでなく一定のトーク力が重要となったり、定期配信して固定客を作るなど、プラットフォームに合わせた工夫を必要とする点です。

3.毎月20万円を稼ぐ音楽活動のシミュレーション

先に挙げた収益ポイントから、毎月20万円を稼ぐ音楽活動のシミュレーションをしていきたいと思います。

3-1.ライブの動員をメインに物販で稼ぐスタイル

ライブに出来るだけ動員してチケット代を稼いでいくスタイルの場合、1枚当たりの粗利が2,000円だとすると、毎月100人のお客さんを動員すると達成できることになります。

ただし、4人バンドで分割する場合には単純に4倍する必要があり、毎月400人、年間4800人となります。毎月必ずライブに来てくれるお客さんは限定的なので、1万人くらいのファンがいるのであれば達成の可能性があります。YouTubeの再生数が全ての動画で10万再生されているのであれば、ようやく検討できる目安と言えるでしょう。

ここに物販の販売も組み合わせることで収益のポイントは増えます。10人に3人が2000円を消費すると仮定して、毎月400人のライブが出来るのであれば24万円の売上、原価率30%で168,000円の利益、4人で割ると一人4万円程度の粗利を獲得できます。

3-2.ライブ配信の投げ銭・EC物販のオンライン戦略

音楽のジャンルにもよりますが、自分のファッションブランドを作って販売しているアーティストは結構いて、在庫リスクを防ぐために1点物を販売したり、注文販売にしたりなどの工夫をしている人もいます。

EC物販で20万円を稼ぐには初めに商品の粗利を設定します。例えば、30%の原価率であれば20万円を稼ぐのに30万円前後の売上が必要で、50%であれば40万円の売上が必要となってきます。インスタグラムのフォロワーが多ければ、そこから集客することが出来るでしょう。

ただし、物販には音楽制作とは異なる知見が必要になってくる分野であり、マーケティング的な専門性の高い戦略や企画力が問われることになります。また物販を購入するほどの固定ファンが増えないと先細りしてしまうため、音楽活動を通してファンを徐々に増やしていく努力も必要です。

ライブ配信で稼ぐスタイルも大掛かりな設備を必要としないため、積極的に稼いで行きたいアーティストにおすすめの活動方法です。ただし、ライブ配信の収益の大部分は視聴回数ではなく「投げ銭」であり、収入の多い男性から多額の投げ銭を受けやすい女性の方が人気を集めやすいという特徴があります。

どちらも大きく稼げる可能性がある方法となりますが、安定させることが難しいところがデメリットとなってきます。

3-3.事務所に入る

音楽事務所に入って給与という形で報酬を受け取る方法です。マーケティングやスケジューリングを任せることができ、音楽制作に集中しやすいという点は大きなメリットです。

しかし、上述した売上から事務所の手数料が差し引かれるためアーティストに入る収益は少なくなります。かなり良い条件で報酬割合50%だとすると、毎月40万円の粗利を稼ぎ続けてようやく達成できるということです。また、誰でも希望する事務所に所属出来るわけではなく、スカウトを受けたり、オーディションなどの審査を受ける必要があります。

レコーディング費用を事務所が持ち出しで賄ってくれるなどのメリットがありますが、駆け出しのアーティストで毎月40万円の粗利を稼ぐのは非常に難しいです。契約内容や契約期間などもしっかりと確認し、事務所へ所属するかどうか慎重に検証されてみてください。

まとめ

今回は音楽活動で生活するために必要な収入とその方法についてシミュレーションしてみました。これからの音楽活動が軌道に乗るよう、やりがいを持って努力されている方も多いことでしょう。

2022年時点、音楽体験の方法は大きく変化しており、ユーザーが求める趣向も細分化されてきていると言えます。トレンドも掴みながら、どのように音楽活動で収入を得ていくのか、しっかり戦略を立ててみてください。

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